Tomofiles Note

ドローンとインターネット、そして人との関係を考えるソフトウェアエンジニアのアウトプットブログ

国内外のドローン関連ウェブサービスを調べる(1) 〜サービスのバリエーション〜

こんにちは。
2019年も、もうすぐ終わりますね。
今年はいろいろな変化を試みて、気持ち的な変化を実感できた年でした。
ドローンにリソースを集中させることで、自らの方向性が明確になって、勉強や活動に明確な意志を感じることができています。
やっぱり目的って大事なんですね。

今回から新しいシリーズの記事を書こうと思います。

私はソフトウェアエンジニアなので、あくまでソフトウェアを作るのが仕事です。
ただ、昨今のIT業界の構造の変化は著しく、プログラムを書いているだけでは仕事がなくなってしまうというのが、もう十何年も前から囁かれて(叫ばれて?)います。
私もそんなおじさんにはなりたくないとは思いつつ、やりたいこともなく7年もSIer系SESで過ごしてしまったのですが、そんなときにドローンと出会いました。

ドローンは新しい産業です。マーケットの成長率も国内外で、少なくとも今後5年ほどは成長が見込まれています。
ドローンは国内外で、登場時期、法律・規制状況、そして、解決できる課題、これらに大きな差異がなく、現時点で少し海外との間で差は出ているでしょうが、ほぼ同じスタートラインに立っていると思っています。

現時点で、私がドローンで何がしたいか、と問われると答えるのが難しいですが、国内外でどんな風に使われているか、という知識があれば、どんな活動にリソースを注げばいいかがわかるようになるのではないかと考えました。
ドローンの活用も、クラウドサービス、IoT、AI、エッジコンピューティング、次世代通信、ブロックチェーン、ロボティクスといった、ITのトレンドの波に乗っていますが(ドローン自体もロボティクスの最先端!)、世の中のドローン企業が、これらITトピックをどのように取り入れながら、どこを目指しているのか、そういった情報を集めることで、ドローンの理解をもっと深めたいと考えました。

思えば、IT業界に入っておきながら、自分が作るソフトウェアに心血注いで取り組んだり、ライバル製品をリバースエンジニアリングしたり、魅力的なサービスを収集するようなことも、したいとも思ったことがなかったです。
ただ最近、ドローンの機体の仕組みだったり、ドローンとクラウドの関係性だったり、ドローンのクラウドサービスのあり方だったりと、人とドローンとITの関係性について、あれこれ考えたり、調べたりするのが楽しいです。気になったサービスに対して、どうやってあれを実現しているのか知りたい、と思うようになりました。
私が憧れていて、夢に見ていたのはこういう熱中できるものだったのだなぁ、なんて最近気づいたのですが、近年まれに見る良い気づきでした。

さて、自分語りが長くなってしまいましたが、今回は国内外のドローン関連のウェブサービスを調査してみました。
ドローンはインターネットに接続され、クラウドコンピューティングに取り込まれて活用されるようになってきています。
そういったプロダクトを展開している企業から、いくつかピックアップして、紹介したいと思います。
なお、私の調査した範囲で私が理解した内容で記載しているので、間違っている部分が含まれる可能性があることをご理解ください。

それでは行きましょう。

↓↓↓

ドローンをテーマとしたウェブサービスは、国内外でもまだまだ多くありません。
というのも、ドローンは基本的に単体使用であり、一つの機体にしか注目しません。そうなると、機体メーカーが展開しているソフトウェアアプリケーションが充実してるので、個人利用であれば事足りてしまいます。
ドローンのクラウドサービスが真価を発揮するのは、多数機体の一括管理や、群制御、業務特化したドローンの制御・管理など、個人レベルではなくビジネスレベルでの活用時となります。

そんな中で、ドローンとクラウドでサービス・プロダクトを展開している現行の企業は、一体どのような価値を提供しているのでしょうか?

第一弾の今回は、ドローンとクラウドのサービス・プロダクトのバリエーションを軸に、気になった国内外の企業をいくつか集めてみました。

Auterion Inc

まずはAuterionです。

auterion.com

Auterionは、Dronecodeプロジェクトの主要メンバー企業で、アメリカとスイスに拠点を持っています。
Dronecodeの主要プロダクトの開発者が創業者の企業で、ビジョンとしても、オープンソースへの最大の貢献をしながら、あらゆるドローン活用で価値を創造していくという、オープンコミュニティを大事にする企業です。
近年では、負の遺産となりかけていたDronecodeSDKの代わりとなる、アーキテクチャから刷新したMavSDKを発表したりと、非常にアクティブな活動でオープンソースドローンテクノロジーの発展に貢献しています。

プロダクトは、オープンソースのPX4やQGCなどをベースとしたソリューション開発、および、オリジナルクラウドサービスによるフライトオペレーションの管理、群制御、AIによる洞察の提供など、ドローン運用の効率化と新しい価値の提供となっています。

面白いのは、やっぱりオリジナルクラウドサービスですね。

ウェブサイトを見ててまず気になるのが、オンラインワークフローというトピックです。
Auterionに限らずなのですが、海外のクラウドサービスは、オンラインワークフローへの統合というトピックが、よく登場します。
クラウドサービスは、すでにビジネスで成立しているオンライン上のワークフローに統合できる必要がある、という主張が伝わってきます。

これは難しい話はしていなくて、データ・ファイルなどを手動・API経由で入力でき、弊社のクラウドサービスの価値を享受してもらったのち、同じように出力して、他のワークフローの入力にしてもらうことで、お客様のビジネスに統合します、と言ってるのですね。
外部接続性は日本の企業でも謳っていますが、オンラインのワークフローに統合するっていう表現が、クラウドでのサービス提供という価値に一歩踏み込んでいるような気がして、感心しました。面白い。

それから気になったのが、AIによる洞察(これは翻訳での表現ですが、英語ではInsights)で新しい価値を提供するというものです。
Auterion自体は、どちらかと言えばドローンのフライトの運用にフォーカスしたクラウドサービスを展開していて、フライトの運用状況やフライトログなどのドローンオペレーティングにかかる様々なデータをAIで解析することで、フライト運用上のリスクの早期発見を促したり、ドローンの機体の異常をいち早く検知したりと、より価値のある洞察をユーザのドローン運用業務に付加できるプラットフォームになっています。

クラウドサービスって、単純にデータのCRUDが提供できればいいってものじゃないんですよね。
前述のオンラインワークフローの件もそうですが、ユーザのビジネス全体の価値をあげるようなサービスが、求められているのではないですかね。
データが勝手に集まってくる環境を作って、データから価値を作るAIの洞察を得て、ユーザにはその間にドローンを利用すること自体の価値創造に注力してもらって、データを他のクラウドサービスに提供してコラボレーションして、全体的な価値創出に繋がるような循環を作る、みたいな。
最低ラインでユーザがやりたいことを実現するタイプの(私の知ってる)SIerのやり方では、創り出す価値が違う感覚がしますね。

そして、これからの時代、AIの知識は必要になってきそうだなと、このプロダクトを見て感じました。

FlytBase Inc

さて、続いてFlytBaseです。

flytbase.com

FlytBaseはインドとアメリカに拠点を置くスタートアップです。
この企業は、検索エンジンでドローンのクラウドサービスについて検索してるときに見つけたのですが、なかなか面白いことをしています。

まず企業のビジョンとしてIoD(Internet of Drones)を掲げていて、インターネットにドローンが常時接続される世界を想定して(そしてすでに実現しかけている)、様々なプロダクト・サービスを展開しています。

他のドローン系のクラウドサービスは、常時接続まで謳っていないところも多くて、例えばドローンがホームに帰還後にクラウドにデータをアップロードしたり、ドローン自体ではなくて地上基地局クラウドにデータをアップロードしたりと、部分的、もしくは限られたルートからのインターネットへの接続を行います。

IoDはIoTに思想は似ていますが、そのアプローチ方法はかなり違います。
というのも、ドローンはまずその飛行アクションに大きな電力を消費しており、加えて多くのセンサーデータや映像などの通信を行うため、高性能なオンボードコンピュータと広い通信帯域が必要です。
IoTのように省電力・省パケット通信ではドローンの価値を活かしきれないのです。

こうしたアプローチから、ドローンとクラウドをより深くリンクさせることで、ドローン活用の価値をグッと高めるプロダクト・サービスを展開しているのです。

クラウドとの接続にはLTEなどの移動体通信網を利用していて、地上基地局を持たずシームレスに運用できるようです。
日本でもLTEを利用したドローンのインターネット接続は様々実験されていますが、現時点では総務省の許可がないと参入できません。このあたり、日本は遅れてるなぁと思うところですが、どうやら上空からの接続で、地上側の電波品質に影響があるらしく、そのための措置らしいですね。

総務省 電波利用ホームページ|その他|無人航空機における携帯電話等の利用の試験的導入

FlytBaseのオリジナルクラウドサービスですが、こちらも面白いプロダクトになっています。

インターネット接続でドローンと直接コミュニケーションが可能ということで、低遅延でのコマンド・テレメトリの送受信や、映像のライブストリーミング、多数機体の飛行制御など、ドローンの遠隔制御・監視技術の底上げを目指してる印象を持ちます。
また、AIとの統合も進んでおり、リアルタイムでストリーミングしている映像からオブジェクト検出を行ったり、オブジェクトのカウント、ある時点からの変更の検出など、映像とAIのコラボレーションが強みのようです。
さらに、こうした撮影画像にジオタグを付与しクラウドにアップロードして、オルソ補正を行ったり、3Dモデルの構築を行うワークフローに統合することで、ドローンでの通常の空撮以上の新しい洞察を得ることができるようです。
いやぁ、すごい。

FlytBaseのプロダクトは、アカウントを作成する必要はありますが、オープンソースのように配布されており(ソースコードではなくOSイメージ?)、サポートコミュニティで質問を投稿したり議論することができます。
アカウントは個人でも作れるそうですが、試してないのでわからないです。
ただ、プロダクトをオープンにして、コミュニティの中で成長させようという意識が伝わってきます。
この辺、日本には無い感覚ですよね。私もアカウント作って触ってみようかな。

AirMap Inc

最後はAirMapです。

www.airmap.com

AirMapはUASトラフィック管理プラットフォームというサービスを提供しています。
いわゆるUTMと呼ばれるものですが、UTMはドローンのクラウドサービスを語る上では欠かせないトピックです。
UTMはAirMap以外にも多くの企業が取り組んでいるサービスで、インターネットで検索すると以下のように国内外のプロダクトがヒットします。

https://www.airbusutm.com/

UTM Platform – Wing

UTM | airpalette

UTMプラットフォームは各社それほど差が無いプロダクトで、違いを生み出すことより、UTMという概念自体に大きな価値を持つものです。
そのため、AirMapに絞った話ではなく、UTMそのものについて説明していきます。

UAS(無人航空機)のトラフィック(交通)管理を行うUTMは、ドローンが目視外飛行(BVLOS)で低空空域を飛び交う時代に向けた、いわゆる管制システムの通称です。

近い将来の目視外の環境下では、物流や郵便、農業、監視といった多様な業務用途のドローンが、低空空域(150m程度)を高密集で飛行することになります。
そして、そういった業務用途のドローン同士や、ホビー、空撮等の目的の目視内運用のドローンとの空域のバッティングが懸念され、さらに有人航空機の飛行空域や空港周辺空域との衝突も防がないといけません。

そういった公共の資産である空域を安全に利用するために、空域を利用するすべてのドローン運航者からUTMに対してフライトプランやフライトデータをリアルタイムで提供してもらい、UTMからはフライトの許可や警告を運航者に提供することで、空の安全を守ろうというのが、UTMのコンセプトとなります。
ドローンの低空空域の利用は、世界的に未解決の課題が多く、各国ともに現在進行形で取り組んでいる最中です。

アメリカでの取り組み
Unmanned Aircraft System Traffic Management (UTM)

ヨーロッパでの取り組み
Switzerland's U-Space: Enabling a "Safe and Open Drone Economy" With Aviation Data Exchange Hub - DRONELIFE

日本での取り組み
ドローン(METI/経済産業省)

AirMapはそんなUTMプラットフォームの中でも、ヨーロッパのU-Space構想の実現に向けて取り組んでいる企業で、グローバルにプロダクトを展開しています。日本でも楽天と手を組んで、楽天AirMapというUTMサービスを提供しています。

2020/03/07
誤りがありました。AirMapはヨーロッパではなく、アメリカの企業でした。
近年はヨーロッパのU-Space構想にも取り組んでいますが、アメリカのFAAの公認USSというのが、正しい立ち位置です。

https://www.skyguide.ch/en/events-media-board/news/#p13446-13453-13459

UTM構想と関連した話ですが、本日付けで以下のニュースが発布されました。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191227-00000020-jij_afp-int

リモートIDも空の安全管理の一種で、ドローンの識別プラットフォームの概念です。
現在の有人航空機も、ADS-Bという識別と位置情報を無線でブロードキャストしており、地上管制システムがレーダーで受信して管制業務に活用しています。
ドローンでも同じように識別情報を発信することで、自分自身を守るだけでなく周囲のドローンの安全も守ることができ、より安心してドローンを活用できる環境ができあがるのです。

ということで、UTMについて一気に説明してきましたが、前述のAuterionやFlytBaseも、UTMとの統合を謳ったりしていて、エコシステムは着実にできあがってきています。
日本でUTMの必要性が問われるのはまだまだ先だとは思われますが、いずれ個人目的でドローンを使用するパイロットも、UTMを通してリアルタイムな空域の使用許可を取りながら、フライトを楽しむ時代がくることでしょう。
そう、それはさながら、飛行機のパイロットが地上管制官と、空港進入許可を無線で取り合うような、ドラマの中のような世界が、ドローンにも来るかもしれないということです。

まとめ

ここまで、ドローンのインターネットにおけるプロダクト・サービスについて見てきました。
前半と後半で、少し毛色が違う話となってしまいましたが、UTMは仕事柄関わりがあるので、説明ベースになってしまいましたね。すみません。

ドローンのクラウドサービスといっても多種多様で、運用にフォーカスするのか専門業務に特化するのかで、提供するサービスが違うのだなぁというのが感じたことです。

そして何より、クラウドとAIはかなり密接に関係していて、AIの知識をつけないと世の中の流れにおいていかれそうだなとも思いました。
とりあえず、IoDという思想が気に入ったので、私も色々試してみようと思いました。いいところまでは、すでに私もたどり着いていたんですけどね。もう一歩でした。

そして次はクラウドサービスへの挑戦です。ドローンのデータが勝手に集まってくる仕組み、AIで解析する仕組み、ワークフローに統合する仕組み、このあたりが次のミッションですね。

また、面白いプロダクト・サービスが集まってきたら、第二弾の記事書きますね。

それでは、良いお年を。

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